「協調と同調」

今年度のノーベル物理学賞に真鍋淑郎氏が受賞されました。その真鍋氏がインタビューの中で話したアメリカ国籍を取得し日本に帰らない理由が波紋を広げていると言います。 それは、「アメリカでは好きなことができます。周囲がどう感じているかあまり気にしません。 私には協調しながら生きることができません」という言葉で、日本の協調性が重視される社会や研究者への待遇に懸念を示しました。
そこで今回は、「協調と同調」について考えてみたいと思います。

【協調と同調】
◆辞書で「協調」を調べてみると、「互いに力を合わせて、助け合うこと。 特に、利害の相反する双方が、協力して問題を解決すること」とあります。
一方、「同調」は「集団や社会の中で、個人が適応的に行動しようとした場合、個人的な意見や考えで行動するよりも、多数者と同じ行動をとること。/ 調子を合わせること。転じて、他人との主義・主張などに同意すること。 他と同じ意見・態度になること」とあります。
◆玉川徹氏は、「日本で言っている“協調”というのは、たぶん“同調”のことなんだと思う」と言っていますが、私もそう思います。
本来の「協調」とは、「他人がどう考えるか」の前に、まず「自分はどう考えるか」ということが大事。 一人一人が「私はこう考える」という意見や考えを出し合って、より良いものをつくること。
◆「みんなはそういうふうに言っているけど、私はそうは思わない」とか「それは違うと思う」と反対意見を言ったりすると、「協調性がない」と思われることが多いですよね。
特にここ数年来、「忖度」や「空気を読まない」という言葉が頻繁に使われるようになったのは、日本の社会で「同調圧力」がまん延していることの現れかもしれませんね。
でも、このままでは日本人は世界で受け入れられなくなってしまうのではないでしょうか。
そうならないためにも、また本来の「協調性」を発揮できるようになるためにも、ディベートの訓練を学校でも職場でももっと取り入れるとよいのではないでしょうか。

《「忖度」と「空気を読む」》
◆「協調と同調」を考える上で、やはり「忖度」と「空気を読む」についても考えないわけにはいきません。
「忖度」は、「他人の心中やその考えなどを推し量ること。 また、推し量って相手に配慮すること。 「空気を読む」とは、「その場の雰囲気から状況を推察すること。特に、その場で自分が何をするべきか何をすべきでないかや、相手のしてほしいことやしてほしくないことことを推測して判断すること」 どちらも悪い方向にいくと、力関係や利害関係で自分のきっもちや考えを曲げて、暗黙のうちに相手に要求されていることを把握して実行してしまうことになる。 これでは世の中は良くなりませんよね。

◆以上、簡単に見てきましたが、要するに大事なことは、日本人はもっと本来の「協調性」を身につけること。 また、「忖度」や「空気を読む」も本来のプラスの方向で生かすことができれば、日本はもっと生きやすい社会になると同時に、世界で活躍できる人が増えるのではないでしょうか。