「江戸のSDGsに学ぶ~Ⅰ」(2)
今回のキーワードは「もったいない」です。この言葉も近年あまり聞かれなくなっていましたが、「食品ロス」などへの関心の高まりとともに、また「もったいない」という言葉に光が当てられるのではないでしょうか。
1.「エコロジー社会だった江戸の町」
(2)「もったいない」
今回は、「もったいない」という言葉についてお話ししたいと思います。
《庶民のエコ意識》
◆江戸時代の庶民が果たしてエコ意識をもっていたかどうかは分かりません。
しかし、江戸庶民の意識は一般的に、物は大切にしなければならないとかんがえていたことは確かです。工場がない時代ですので、大量生産はできず、したがって手作りの物は大切にして徹底的に使うという習慣ができていて、ゴミはあまり出なかったからです。
つまり、江戸庶民の意識としては、物は捨てないで使い切りたい、できるだけムダな出費は抑えたい、そして、人が手間をかけて作った物をすぐに捨てるのは「もったいない」などの意識が強かったのです。
《もったいない》
◆只今、「もったいない」と言いましたが、江戸の商人しぐさには「もったい大事」という言葉があります。これは“人”と同じように“物”もかけがえのないものとして大切にしようという考えです。
◆そもそも「もったいない」の「もったい」は漢字で「勿体」と書き、物の本来あるべき姿「本体」を意味します。つまり、「勿体ない」は形がなくなるまで大切に使い、利用しつくしなさいという意味が込められた言葉なのです。 形があるものを大切につかいなさいという「もったい大事」から、さらに一歩進めて、形がなくなるまで使い切りなさいという「もったいない」という行動にまで結びつけたところに意味があるのではないでしょうか。
◆「もったいない」といえば、ワンガリ・マータイさんを思い出す人が多いと思います。
マータイさんはケニア出身の女性環境活動家で、2004年にノーベル平和賞を受賞しましたが、その授賞理由は、アフリカ全土で女性の手で植林活動をはじめ、「持続可能な開発、民主主義と平和への貢献」でした。 彼女が来日した折、日本語の「もったいない」という言葉を知り、エコロジーのキーワードとして積極的に取り上げたと言われています。
マータイさんが広めた日本語の「mottainai」は今は世界の共通語として知られるようになったことからも、江戸がエコロジーな社会であったことがお分かりいただけると思います。
◆以上のことから、江戸はSDGsの⑫「つくる責任 つかう責任」のうちつかう責任をクリアしていたことがお分かりいただけると思います。