「江戸のSDGsに学ぶ~Ⅱ」(5)
ここまで「リサイクル社会だった江戸の町」につて見てきましたが、今回が最終回です。
「もったいない」が当たり前だった江戸では、古い物や壊れた物でも簡単に捨てたりしませんでした。 リサイクルは江戸の一大産業で、専門業者もたくさんあり、資源を有効利用していました。
「紙のリサイクル」「灰の利用」「着物の一生」など有効利用の例はいろいろありますが、今回は「江戸庶民のエコ生活術」の代表例として「灰の利用」をご紹介したいと思います。
2.リサイクル社会だった江戸の町
(5)江戸庶民のエコ生活術
【灰の利用】
◆江戸の町は、木と紙で造られていた家はもちろんいろいろな道具や着る物も木や草など自然の素材で作られたものがほとんどでした。
これ以上使えなくなったら、たいていの物は燃やしました。燃やした後に残るのが灰です。
灰はアルカリ性で、主な成分はカリウムやカルシュウム、マグネシウムです。これらの性質を生かして、灰はさまざまなところで利用されました。
◆それでは、「灰の利用」についていくつか具体的にご紹介しましょう。
①酒 造 ・・・ アルカリ性の灰には、雑菌が増えるのを防いだり、腐るのを防いだりする役割がありました。
②染 色 ・・・ 灰に含まれる成分が、染色の色を鮮やかにしたり、色落ちを防いだりする効果がありました。
➂製 紙 ・・・ 紙の原料である木の繊維を灰汁で煮ると、不純物が溶け出しました。
④肥 料 ・・・ 畑の作物は、土が酸性だと育ちにくいので、アルカリ性の灰を撒いて良い畑にしました。
⑤陶器の釉薬 ・・・ 土を焼いた器に、灰を混ぜた釉薬(うわぐすり)をかけて焼くと表面がツルツルに仕上がりました。
◆このように、灰はとても価値のある商品でしたので、家庭用ばかりでなく、業務用としても大活躍しました。
ですから、江戸の人たちは、家のかまどや火鉢に残った灰を「灰買い」に売って生活費の足しにしました。
そして、「灰買い」は各家のかまどや銭湯から買い集めた灰を「灰問屋」に売り、「灰問屋」は灰を必要とする業者に売ったり、灰を売買する市に出したりしました。
◆このように、江戸の人たちは、要らなくなった物を燃やしてできた灰までも、簡単に捨ててしまっては「もったいない」と考えていたのです。
【おわりに】
◆今回は戸庶民、特に長屋に住む人たちの暮らしからそのエコ生活ぶりをご紹介しましたが、ご感想はいかがでしたか?
江戸の庶民たちは決してエコを意識していたわけではなく、物質的に恵まれていなかったからこそ、その物の形がなくなるまでとことん使い切るしかなったのです。そしてそのためにいろいろ工夫し、知恵を絞りながら賢く生きていたことがお分かりいただけたことと思います。
◆過去から現代、そして未来へと暮らしは変化していきますが、私たちが江戸の人たちの暮らしから学んだことを今の生活の中にしっかりと生かし、未来の人たちにしっかりと伝えていきたいものですね。