「原発をとめた裁判長」
先日(9/12)、ポレポレ東中野(ミニシアター)で映画「原発をとめた裁判長」を観てきました。
この映画に登場する裁判長とは、樋口英明・元福井地裁裁判長で、私が尊敬するお一人です。映画には、退官後弁護士にはならないで、日本における原発の危険性を訴訟や講演で社会に広める活動をする樋口英明・元裁判長の生き方が描かれています。
私は2014年に関西電力大飯原発の運転停止命令を下した樋口元裁判長の裁判官としての良心に基づいた判決に感動して以来、退官後の活動に関心をもってきました。
そこで今回は、この映画に描かれた樋口英明・元裁判長についてご紹介します。
【大飯原発3・4号機運転差止判決】(一部抜粋)
◆(主文)被告は大飯原発3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。
ひとたび深刻な事故が起れば多くの人の生命、身体やその生活基盤に重大な被害を及ぼす事業に関わる組織には、その被害の大きさ、程度に応じた安全性と高度信頼性求められて然るべきである。(後略)
◆(要約)原発事故のもたらす被害は極めて甚大である。それゆえに原発には高度の安全性が求められる。
地震大国日本において、原発に高度の安全性があるということは、原発に高度の耐震性があるということにほかならない。
しかし、我が国の原発の耐震性は極めて低い。よって、原発の運転は許されない。
【樋口理論】(ガルで耐震性を比較)
◆「樋口理論」とは、一言でいうと「原発の耐震性は日本で頻発する地震の揺れに脆弱である」ということです。
地震は、「マグニチュード」(地震が発するエネルギーの大きさ)と「震度」(地震の観測地点がどのくらい揺れたかを表す単位)で表すことは皆さんもよくご存知ですよね。
◆でも、「ガル」を知っている人は少ないのではないでしょうか。「ガル」は、観測地点での振動の激しさ・加速度を表す単位です。
建造物の耐震性能を表す単位としても使われています。
◆2021年3月までに日本原子力規制委員会が認可した原発の耐震性を示す基準値振動は次の通りです。
(玄海原発3・4号機/川内原発1・2号機)620ガル、(伊方原発3号機/東海原発)650ガル、(高浜原発3・4号機)700ガル、(大飯原発3・4号機)856ガル
ちなみに、3.11東北地方太平洋沖地震は2933ガル、対して過酷事故を起こした福島第一原発の基準地震振動は800ガルでした。
◆2000年から約20年間に起きた主な地震のうち700ガルを超える地震は30回以上起きています。
原発の耐震設計基準が頻発する地震よりも低いことが解ります。
ちなみに、住宅メーカーの耐震性能は、(住友林業)3406ガル、(三井ホーム)5115ガルです。
原発の耐震性能が住宅メーカーの耐震性能よりもずっと低いなんておかしいと思いませんか?
◆この樋口理論はグラフになっていて、地震大国日本の原発の耐震性がいかに脆弱か一目瞭然です。
樋口元裁判長は、この「樋口理論」を通して、原発の危険性を広く知ってもらうために講演活動をしているのです。
◆ご感想はいかがですか?私が樋口英明元裁判長を尊敬するのは、何よりも裁判官としての良心と公正に基づいて行動なさっていることです。 あの関西電力と地元ボスとの汚職まみれの中で“掃き溜めのツル”のように毅然としたお姿は素晴らしかったと思いませんか。
映画「原発をとめた裁判長」は全国のミニシアターで上映されますのでぜひご覧ください。