「災害時の日本の課題」

能登半島での大地震が発生して3か月余り。復旧はまだまだかかりそうで、被災された方々が日常の生活を取り戻すことができるようになるのは、一体いつのことになるのでしょうか?
以前、ある人がイタリア人から「日本は地震大国で、しょっちゅう災害が起きているのに、また科学的な技術力もあるのに、なぜ毎回同じ復旧の仕方を繰り返すの?」と聞かれたそうです。本当に不思議ですよね。
この4月3日に発生した台湾(花蓮県)での地震の対応とその避難・復旧の仕方(特に避難所の在り方)がとてもスピーディだったのには驚きました。
そこで今回は、台湾地震での対応と避難所の在り方についてご紹介したいと思います。
台湾から学ぶことが実に多いことがお分かりいただけることと思います。

【能登半島の現状】(4/5現在)
◆4/5(金)現在の能登半島の避難所の様子は下記の通りです。
(1次避難所/体育館など)開設:146か所 /  避難者:3597人
(2次避難所/旅館・ホテルなど)開設:187か所 / 避難者2671人
(輪島市・輪島高校)4月8日入学式
※体育館では今も地域住民が避難生活を送っている。

 

【台湾の地震後の対応】
《地震発生から避難所ができるまで》
(1時間後)市や各支援団体を結ぶLINEグループが立ち上がる~必要な物資の情報交換
(2時間後)テント設営
(3時間後)被災者受け入れ
(4時間後)設備ほぼ整う

《充実した避難所設営のカギ》
(カギ①)官民連携~行政が支援要請
(各ボランティア団体・協力団体)
※災害時に備え、日頃から官民協力の仕組みができている
 ※行政と民間の協力は難しいことではない。(普段からコミュニケーションを取っているから)
『スムーズな連携の背景』
 ※平常時、自治体と各ボランティア団体が頻繁に顔を合わせ、災害時の避難訓練や研修を実施
(カギ②)役割分担
※行政はどのボランティア団体がどんな支援を提供できるか把握しており、災害時に支援が重複しないようになっている。
※例えば、(台湾仏教慈済基金会)テント・毛布・ベッド・食事を提供 / (台湾世界展望会)子どものケア
『ボランティア団体は“支援の専門家”』
(台湾仏教慈済基金会)普段から国内外の避難所に特化した支援を行う。⇒災害時に避難j所設置に関する行政アドバイザーになる。
(台湾世界展望会)普段から支援が必要な家庭の子ども支援を行う⇒専門知識を用いて、被災した子供の心のケアを行う。

《避難所:スピード閉鎖・2次避難へ進む》
(花蓮市内の避難所)撤収作業完了・地震発生から4日で閉鎖
(避難者)
行政が手配した3つの寺院の宿泊施設(個室:バス・トイレ
付)へ移る。
※長期的に寺院の宿泊施設を借りるのは、根本的な解決策ではない。
中長期的に使える土地を探すほか、仮設住宅
を建て、被災者が早く元の生活に戻れるようにしていく。
『避難所閉鎖:なぜ早い?』
※台湾は8日(月)に4連休が明け、学校が再開
※授業の進行の邪魔にならないように、前日に避難所を閉鎖した。

【台湾:災害対応に生かされる・過去の教訓】
《2009年:モラコット台風》
※メディアで報道された地域に物資・ボランティアが集中
⇒分配に手が回らず、人員・物資が浪費
※報道されなかった地域には、人員・物資が不足
〈教訓から:防災の動き〉
(2009年)
防災プロジェクト「強靭台湾計画」立ち上げ
〈防災計画の内容〉
※発災時 直轄市・県・町など 自治体業務の役割分担
※町の防災計画作り
※避難訓練・防災備蓄
※民間との連携
の確認
〈民間との連携〉
(2010年代)
地方政府がボランティア団体・企業などと災害支援校訂を締結
 ※災害時に避難所運営・物資提供などを要請できる体制を構築
  (2021年12月時点:災害支援協定  ボランティア団体 1630団体 /  企業 542社)

《2018年:花蓮地震》
(避難所)仕切りなし
/ 休憩所と食事のっスペースがあいまい(被災者から不満も)
★現在の日本と同じ状況だった。
(反省)
各ボランティア団体からの支援が重複⇒需要と供給が釣り合わず
※支援内容を細かく決め、支援に当たることにした。
★今回の台湾地震では過去の教訓がしっかりと生かされた。

【災害時の日本の課題】
(課題①)
自治体ごとに“バラバラ”の避難所運営
(石川謙では)
一部自治体で災害用テントの備蓄なし。
(福島・相馬市では)2021年福島沖地震の発生から数時間後に35張りのテントを設置完了
《自治体ごとに避難所の様子が違う理由》
『災害対策基本法』
避難所の環境改善は市町村の努力義務」にとどまる。
災害対策基本法で、市町村が避難所開設の主体となっているため、
 全国1741市区町村で1741通りの避難所のあり方が存在している。
『避難所の環境改善には』
(海外では)
防災専門の省庁が災害支援の“標準化”を進めている
国もある。
その結果、国内のどこで災害が起きても避難所の様子は同じである。
(日本でも)
避難所の環境は、全国どこでも差が出ないよう国が防災専門の省庁を設置して標準化すべきである。
(課題②)自治体主導の避難所運営に限界:専門ボランティア活用急務
 〈石川・輪島市の避難所:1月中旬〉
  ※市の職員ら~
市内の避難所への物資配布や仮設トイレの清掃に追われ⇒本来の業務に戻れず。
※職員の多くも被災し、
家族を避難所に残し働き続ける人もいた。
※全ての業務が滞っていた。
(能登半島地震のボランティア:避難所の状況について)
※日本でも避難所運営
をボランティア団体に任せる流れ少しずつ広がっ
てきているが、やはり問題なのは標準化がなされていないこと。
【解決するには】
※行政とボランティア団体との連携がカギ
しかし、平時のうちに準備ができていない。
※専門性を生かしたボランティアの支援活動と訓練が必要。

◆随分長い紹介になってしまいましたが、ご感想はいかがでしたか?
いかに台湾の災害時の対応が素晴らしく、学ぶべきことがいかに多いかお分かりいただけたことと思います。
要は、本気で過去の教訓に学ぶ気があるかどうかの違いだと思います。
被災者のことをどれだけ真剣に考えているか、また心あるボランティアたちの思いをどれだけ無駄にしないか、まさに為政者の本気度が問われているのではないでしょうか。
(資料:4/9放送の「羽鳥慎一モーニングショー」のパネル)