「教育の脱デジタル化」(1)
教育にデジタル化は欠かせないと思っている日本人は多いですが、近年教育先進国の北欧では「脱デジタル化」が進んでいるといいます。なぜなのでしょうか?
今回はその背景をみてみたいと思います。
【北欧の教育先進国のデジタル化】
◆OECD(経済協力開発機構)が毎年発表している学習調達度調査(PISA)で常に上位を占めている教育先進国のフィンランド。2010年代に教育のデジタル化が急速に進みました。
11歳迎えるとノートPCを無償で配布し、授業でデジタル機器の使用を推進しました。
その結果、2018年には市内のほとんどの中学校では紙の教科書の使用を取りやめてしまいました。
【教育の脱デジタル化】
◆ところが、OECDの学力到達度調査で常に上位だったフィンランドの順位が「科学的応用力」「読解力」「数学的応用力」のどれもが急落したのです。
2003年度には全ての分野で1位でしたが、2022年の最新の調査では「科学的応用力」が5位、「読解力」が10位、そして「数学的応用力」がなんと16位までに下がってしまったというのです。
◆その要因の1つとして、授業でのデジタル機器の利用が指摘されています。そのため、「脱デジタル化」を進める学校が出てきているといいます。
◆フィンランドの10代の子どもは1日平均6時間ディスプレーを見ているといいます。
心理学者はデジタル機器の過度の使用は、身体面・精神面のリスクを伴うと指摘しています。
◆子どもたちはパソコンを使うようになってから、授業中にSNSでメッセージがないか確認をし、また授業に戻り、しばらくすると別のウェブサイトに行って、また授業に戻るということを繰り返していたのです。
そこで、授業でノートPCを使うのを取りやめたところ、生徒たちが授業に集中できるようになり、気が散ることが減ったといいます。つまり、デジタル機器の使用によって、多くの子どもが授業に集中できなくなっていたのです。
◆そこで、フィンランド政府は、授業中に個人用機器の使用を禁止する新たな法律の制定を計画しているといいます。
◆実は、スウェーデンでも昨年8月にこれまでのデジタル化の流れを覆し、紙の教科書を読んで、手書きのノートをとることに重点を置くよう方針転換をしたといいます。
そのため、スウェーデン政府は、新たな教科書発行に年間約70億円、さらに学校の図書購入に約95億円を計上したそうです。
【日本の教育現場は?】
◆文科省では「GIGAスクール構想」として、全国の児童・生徒に1人1台のタブレット端末などの整備を進めていて、2020年度にはほぼ図部手の自治体で完了しています。
現在は、構想の第2期として、端末の更新・整備のための基金設立やネットワーク環境の地域格差の解消、教育現場での生成AIの活用など、デジタル化をより一層推進させようとしている状況です。
◆ご感想はいかがですか?
確かにデジタル教材は便利だし、効率もいいし、経費削減になるかもしれれません。その上、日本の「デジカル化」は世界から何周も遅れているので、焦ってますますデジカル化を進めようとするかもしれませんね。
しかし、せっかく何周も遅れているのですから、この際先を行っている人たちがどこでつまづいているのかを見ながら、修正してもいいのではないでしょうか。
もっとも、日本の社会は一旦決めてしまうとなかなか変えることはできない国なので、完全に失敗するまで「デジカル化」を推し進めるかもしれませんね。
いずれにしても、日本には状況に合わせて修正するという柔軟性が必要ではないでしょうか。
今回は「集中力」が「脱デジタル化」の要因とされていますが、「集中力」以上に大きな要因があるのではないでしょうか。
機会がありましたら、別の要因についても探ってみたいと思います。