「人の心は目に見えると思いますか?」


先日、相模原市内の小学校で4年生の子どもたちに「江戸しぐさに学ぶ思いやりの心」というテーマで授業をしました。その中で、「今、思いやりの心と言いましたが、人の心は目に見えると思いますか?」と子どもたちに聞いてみました。すると、ほとんどの子は「人の心は目に見えない!と答えました。大人の皆さんはどう思いますか?
実は、江戸の人々、特に江戸の商人たちは人の心は目に見えると思っていました。それは、その人が思いやりの心をもっているかいないかは、その人の「しぐさ」を見ればわかると考えていたからです。
「しぐさ」というのは、何かをする時のちょっとした動作や振る舞いのことで、「目に見えるしぐさ」とは、「目つき」「表情」「ものの言い方」「身のこなし」のことです。
例えば、「お愛想目つき」は、言葉だけではなく目つきにも感謝の気持ちを込めること。
「うかつ謝り」は、たとえ足を踏まれたとしても、とっさに避けられなかった自分のうかつさを恥じ、相手を責めるようなしぐさを見せないこと。「三脱の教え」は、初対面の人には、年齢・職業・地位を聞かないこととし、先入観で人を判断することへの戒めです。
また、江戸の商人たちは「戸閉め言葉」といって、相手の口も心も閉じさせてしまう言葉遣いや、「水かけ言葉」といって、人をバカにしたり貶めたりするような言葉遣いをしないように心がけていました。
このように、江戸の商人たちは、人の心はその人のしぐさ「目つき・表情・ものの言い方・身のこなし」を見ればわかるので、「人のしぐさを見てきめよ」といって、身なりや持ち物ではなく、しぐさで相手が信用できるかどうか判断していたのです。このことは逆に、自分もしぐさで判断されるので、いつもしぐさには気をつけていたそうです。
「人の心は目に見える」と聞いて、子どもたちはビックリしていましたが、「これまで気にしていなかった言葉づかいや表情にもう少し気をつけて,人を傷つけないようにしようと思いました」という感想を書いてくれた子もいました。私が伝えたかったことをしっかり受け止めてくれた子どもたちに感激しました。

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