「コロナ危機:どう生きる」

ここのところ、NHKでは山中伸弥教授をはじめいろいろな方々に「コロナ危機:どう生きる」というテーマでインタビューしています。
今回はそれらの方々中から、私が特に注目したお二人を紹介します。お二人は異なった視点から「コロナ後の日本の社会は変わる」ことを提言しています。

【奥田知志さん】 「新しい社会をつくるチャンス」
◆30年以上ホームレスや生活困窮者の支援を行ってきたNPO代表の奥田知志さんがコロナ危機の中で気づいたのは「今が新しい社会をつくるチャンス」だということです。
先行きが不安な中で炊き出しに来ているのはホームレスだけでなく相当多くの地域の人たちだそうです。“1食助かる”というレベルで来ているのです。仕事と住まいが同時に失われてしまうということがすでに起こっている。今までホームレスや生活困窮者の支援はどこかで分断されてきた。つまり、「それはホームレスの人たちの自業自得でしょう」とか「生活困窮者の人たちが頑張らなかった結果でしょう」という自己責任論で分断されていた。
しかし、幸か不幸か今回の事態は多くの人が同じ状況の中で苦しんでいる。いろんな人が「これは自分の問題だ」と思える。 人間は追いつめられると“貧すれば鈍する”とか言うけれど、案外そうじゃなくて、私は“貧すれば出会う”し“貧すれば考える”のだと思う。人間はその時に本当の力を発揮する。 今回も必ず新しい一歩につながると考えている。絶対に社会は良くなります。まだこの国は捨てたものじゃない。この危機を乗り越えると同時に新しい社会の創造へと、いま私たちは踏み出し始めた。一歩ずつ踏み出し始めたわけです。
※「まだこの国は捨てたものじゃない」という言葉に励まされた気がします。

【夏野剛さん】 「進むオンライン化 社会が変わるチャンス」
◆インターネットからの接続サービス(“iモード”)の生みの親として知られる夏野剛さんは、急速に進むオンライン化は社会が変わるチャンスだと語ります。 夏野さんが率いる「ドワンゴ」は、感染拡大を防ぐためいち早く全社員1000人を対象にテレワークを行ったことで注目されました。
リアルな会議は顔を見ながら場の雰囲気を読みながら発言するため、極端に違う意見や全く異なる観点からの意見は出にくいと感じていたそうです。ところが、テレワークの会議は場の雰囲気が読めないので、ちゃんと自分が考えて正しいと思うことを皆がきちんと主張するようになったこと。しかもそおれが失礼ではなくなったそうです。そして、上司を忖度してとか、なんとなく場の雰囲気で言いづらいとか、そういったことがどんどんなくなったといいます。このようなメリットがある反面、デメリットもあるといいます。
それは、一日リアルな人との会話がないのはちょっとストレスに感じることです。そんなときは、日常のちょっとした会話をつぶやくことで(反応してもらって)寂しさを和ませるなどの工夫をしながら仕事をすることを推奨しているそうです。
また、営業など他の会社の人と顔を合わせる職種や新規顧客開拓にテレワークを取り入れる場合は、とにかく資料を充実させることが大事だといいます。 ことばで相手を動かしていくのが日本の営業のやり方で多いが、とにかく見れば良さが一目でわかるような資料を事前に送付しておき、相手とのテレワークの会議の席では補足説明だけするようなスタイルにどんどん変えていくべきだとも言います

“iモード”の開発に関わり普及させたことで知られる夏野さんですが、その後さまざまな企業の経営に関わりながら一貫してITをどう活用するか考えてきました。そして、昨年からはオンライン診療やオンライン学習について提言してきました。
今後の社会のああり方について夏野さんは次のように語っています。
日本はテクノロジーがあるにもかかわらず、なかなかそれが効果的に人のシステムの中に入っていっていない。今までは変えなくてもなんとかうまく切り抜けられていたが、これからは変えなくても生きていける状況ではなくなりつつある。 これ(今回のコロナ危機)を機に、今後の世界にオンライン化を活かしていくべきだし、やれると思う。
※今後、働き方改革が単なる時短ではなく、内容の面でも日本人が世界の人たちと対等にグローバルな働き方ができるようになるのではないかという期待をもったインタビューでした。