「江戸の旅人たち」
GoToトラベルが始まってからというもの、多くの人たちがまるで新型コロナが終息したかのようにあちこちへ旅行していて、大丈夫かしらと心配していました。すると、案の定というべきか、感染者が激増しての“第3波”です。キャンペーン中とはいえ、コロナ禍の最中でも旅行する人の心理が正直言って私には理解できません。
そんな折、江戸連の圓山謡拙氏の「タイプ別に見る“江戸の旅人”考」を読みましたのでご紹介します。
【タイプ別に見る「江戸の旅人」】
(タイプ1) 人生の一時期にある目的のために数か月~数年に及ぶ長期の旅行を行う。
例えば、橘南けいは天明年間に医者としての修行と自己の修養を目的として鹿児島~下北半島まで4年強の旅をした人です。
また、女性俳諧師の諸九尼の旅も典型的なこの型です。彼女の旅の目的は各地の俳人との交流と芭蕉の足跡を訪ねることであり、俳人のネットワークを活用した旅であることが特徴です。
(タイプ2) 何らかの理由で故郷を喪失した人が行う旅に明け暮れる人生です。
その代表は犬目の兵助で、天保年間に甲州一円を巻き込んだ一揆の主導者として、「死罪」の判決を受けるも、高崎~上田~善光寺~近畿~中国~四国、伊勢などを雲水僧などの姿で托鉢と算盤の指導をしながら逃亡の旅を続けた人です。(最後には木更津で寺子屋師匠として人生を全うしました)
(タイプ3) 長期の旅をする点はタイプ2と同じですが、時々故郷へ帰るいわばフーテンの寅さん型です。
木喰上人はこれに該当しそうです。彼の足跡は九州から蝦夷地までの広域に及び、各地に木喰仏をたくさん残しています。彼の旅は文字通りの無銭飲食の旅であり、その返礼の形が木喰仏であったようです。
(タイプ4) 生業としての旅です。
富山の薬売り・御師(伊勢や富士講などの参詣案内役)・近江商人・旅芸人などがこれに当たります。江戸で食い詰めた富本節(浄瑠璃語り)の富本繁太夫が残した旅日記に旅の様子が詳しく記されています。
(タイプ5) 時代の要請に突き動かされる行った旅です。
ロシアの南下問題に端を発して、蝦夷地を含めた北方地域の正確な情報把握に奔走した最上徳内・間宮林蔵・松浦武四郎といった北方探検家がこれに該当します。
◆ご感想はいかがでしたか。日本人の旅行好きは江戸時代からのDNAなのかもしれませんね。 また、江戸時代にかなり多くの人たちが自由に旅をしていたこと、そして、それ以上に、女性俳諧師の諸九尼のように長期の旅行ができた女性たちがいたことに驚きました。 しかも、江戸時代の旅のほとんどは個人旅行であり、徒歩だったことを思うと、現在の旅行のあり方を一考してみるのもよいかもしれませんね。(私自身は、コロナ禍の中で、自分のこれまでの人生の旅を振り返ってみるのも必要かなと思いました)